安らぎ|10月24日

葉状腫瘍疑いは結局、病理診断の結果、
繊維腺腫で悪性所見は観察されず断端も陰性だった。
これで、経過観察も必要なくなる。
すっきりするはずが少しばかり寂しい。


何故か。


主治医は30歳代前半かと思われる女医さんで、
いつも「大変お待たせして申し訳ありません。」
と頭を下げてから診察が始まる。
患者が何を聞きたいのか、何を言おうとしているのか、
まっすぐ目を見て聞き出そうとする。
その目は何の駆け引きもない。

常に笑顔で明るい。
時間を気にして患者の気持ちを遮ることは微塵もない。

キーボードの入力が異常に速い。


きっと立派な医師になるのだろう。


診察中であるにも関わらず、こんな娘が居たら心強いだろうな、とか
息子が居たら、こんな奥さんならステキだろうな、とか
バカげたことを考える。


聡明でカワイイ顔は今はハッキリ覚えているけれど
やがて忘れるときが来るのだろう。

もう二度と会わないのだろうな。


私にとって、かつて「病院」というところは、
常に息が詰まる緊迫した空気が充満する場所だった。
彼女には5回ほど会っただけだけれど、
そんな場所で明らかにつかの間の安らぎを味わった。


生まれ持った素質や才能、そして人格の全てが
標準病院の見えない巨大な壁に少しでも阻まれてしまわないよう、

ただただ祈りたい。