雨の日|12月2日

子供の頃からなぜか雨に煙る町並みが好きで、
鬱陶しそうに傘をさして歩く人達を横目に
バカみたいに雨の中で楽しそうに遊んでいたことを思い出す。

夫を喪って思い出だらけの近辺を歩くことが苦痛で仕方ないけれど、
雨の日なら抵抗なく外を歩ける。
学生時代によく聴いたユーミンの曲に
「どこまでも遠いところへ歩いて行けそう」という歌詩がある。
正にそんな気分になる時、
まだ残されている少しばかりの欲求に身を任せている自分に気付き、
生きていることを実感する。
この感覚は夫と知り合う前からずっと持ち続けているもので、
この歳になってもまだ消えないでいる。
明らかに夫と育んだものではない。

この5年ほど義務感だけで生きてきた。
今も欲しい物もないし、行きたいところもないし、食べたいものもない。
夫が亡くなった今、
義務感は自分の身体的、精神的始末をキレイにつけることに終始している。
そんな自分の中に
若い頃から変わらず存在している違う自分のかけらを発見して、
とても懐かしくて切ない気持ちになって、
少しだけポジティブな気持ちにもなる。

何が好きかと聞かれたら、
今は迷うことなく「雨の日」と答える。