後悔と渡辺貞夫|7月14日

時間の経過は、私に様々なことを気付かせる。

夫の闘病に関しては、殆ど後悔らしきものはない。
だけど、最近一つだけ分かったことがあって、
そして確実に後悔している。

それは、夫に甘えなかったこと。

穏やかに人生を全うして欲しいと、
ひたすら願う人に自分の全てを開放できなかったこと。
理解し合い、助け合い、
余りある愛情を注いでくれる人が
両手を広げてくれているのに、
その胸に思い切り飛び込めなかったこと。

闘病中、義務感から
私はいつも淡々とポーカーフェースを決めこんでいた。
人生の最後になって素直に愛情表現をする人に
素直になってはいけないと、
心にブレーキがかかっていた。

そんな自分に最近になって気が付いた。
居なくなって、
それがどれほどの後悔に値するものなのかを思い知っている。
もう二人の人生は二度と戻っては来ない。
最後の最後なのに、
もっと違う夫婦関係を築くべきだった気がしてならない。

過ぎて行く時間は思いのほか残酷で、
考えてもみなかった感情が
後から後から沸いてくる。

「オマエ興味ないし、オレ一人で渡辺貞夫のライブ行ってこよかな」
なんて言いながら結局行かなかった。

自分を誤魔化しながら渡辺貞夫のサックスを毎日々聞いていたら、

いつの間にかその音色に虜になっている。