移り行く季節9月13日

日本の四季は、私には過酷で、
季節が移り行く度に二人で生きた記憶が鮮明に蘇る。

夕陽は一生見ないと決めた。
近隣のクリニックで肺がんが、ほぼ確定的となったとき、
更に精密な検査をするために、CTを撮りに行く前日
私達は秋の夕暮れ時に散歩をした。
もう、あと戻りできない状況の中、
二人、無言で見た夕陽は皮肉にも
今まで見たことがないほどキレイで
そして、とてつもなく悲しかった。
その時夫は、私の不安を振り払うように、
私の為に穏やかに微笑んでくれていた。
私達二人の人生の最初で最後の忘れられない夕陽だった。
私は此処には二度と来ないと誓った。

また、秋が巡って来る。
そして、冬が来て、みんな寒い冬が終わることを心待ちにする。
やがて、ポカポカと体を包み込む柔らかな日差しを待ってました
とばかりに享受する。
私には、どの季節にも夫との思い出が充満している。
季節の移り変わりは、その記憶をこれでもか、と呼び覚ます。
決して辛い思い出ばかりではないけれど、
手の届くところに居ないことを体中で実感するのは、強烈に辛い。
親を探す子供のように無性に会いたくなって、
何処に行けば会えるのか、真剣に考えたりする。
本当に二度と会えないのか、と信じられない気持ちにもなる。

夫が元気な頃は、日本の四季の趣深さに酔いしれていた。
乙な国に生まれたものだ、と夫と二人季節の変わり目を楽しんでいた。
でも、悲しみを抱えてしまった人間には日本の四季はとても厳しい。

いつの日か、あの世とこの世で移り行く季節を楽しめればいいけれど....。