ノバリスの選択| 8月13日

一年以上も前から、
肺がんⅣ期でも治療が可能な標準治療外の方法を模索し続けて来た。
夫の病態、体質、そして性質に見合った治療を
私が考えられる範囲で考え続けた。
その中で、二ヶ月程前から頭の中を充満しているものがあり、
休眠クリニックの院長にも相談していた。
それは、粒子線とノバリスである。
夫は紛れもなくⅣ期であり、治ることは100%無い。
しかし、最初に発覚した時点からの転移巣には殆ど動きがない。
常に肺の原発の制御にのみ苦労している。
腫瘍細胞は常に変化し続けているので、
この状況が、これからも続く保障はないが、
現段階でノバリスや粒子線を排除するのは如何な物か、
という思いが大きくなってきた。
あまりにも真剣な私の気持ちに、
当初抱いていた夫の気持ちも、この二ヶ月間で変化しつつある。
まず、私の気持ちをそこまで無視し続ける事への違和感。
多額のお金がいると言っても、遊びや趣味に投じるわけではなく、
自分の命への最後の投資だと思えなくも無いこと。
そのお金も民間の保険で少しは賄えること。
そして、何より一日でも一緒にいたい気持ちは何にも増して大きいこと。
などの理由から自ら院長に「原発に放射線を当てるのはどうでしょうか?」
と二ヶ月前に切り出していた。
本人にすれば、「ムリでしょう」という答えを多少は期待していたふしがあるが、
期待に反して、「なるほど、私が信頼の置ける施設が二箇所あるので、
こちらから全部データーを揃えて連絡してみます」と思わぬ展開になった。
そして、結果が出るまでにほぼ二ヶ月経ったが、
粒子線は、やはり転移巣があるので適応外の答えが帰ってきたが、
ノバリスの方は、今日、初診があって、
あっさり来週から治療に入ることになった。
「大阪府立成人病センターの主治医や
休眠クリニックの主治医の先生とじっくり相談されてからの結論でもいいですよ」
と言って頂いたが、もはやこれ以上考える余地もないので、
さっそく固定具も作り、精密なCTも撮った。
最初の診察では、今までの治療経過を念入りに見て頂き、
「よく考えて、上手く制御されて来ましたね、
お話を伺っていると、標準の医者以上の知識ですよね」などと言ってもらった。
副作用のことを考えるとタイミングが遅れたことをかなり後悔していたので
少し救われた気がした。
その副作用だが治療中は殆ど気になる症状はないらしいが、
食道に近いので若干の炎症を起こす可能性はあるらしい。
そして、気管支に近いので晩期的に気管支炎や無気肺が懸念されるらしい。
放射線性の肺臓炎は必ず起きるが症状は心配するほどではないらしい。
しかし、どちらにしても副作用を恐れて治療を止める理由にするのは
得策ではないと言われた。
気になるとすれば自由診療になるので治療費のことだと言われた。
ずっと前から気になっていた、このクリニックは
「がん医療の今」を監修されている西尾正彦先生が
放射線治療の権威であると尊敬する医師が名誉院長である。
私は、とにかく院長との時間を持ちたかった。
そして今日実現したのである。
驚いたのは、局所の根治率が70%であること。
残りの30%が再発してしまうそうだが、
私達は緩和的照射をするのではなく、
あくまで根治を目指す治療しかしないと言われていた。
局所に関して、再発の時期も二年以内という事は考えにくいそうである。
私が想像していたのは、緩和的照射に近いニュアンスだったようである。
全てが結果論であることは、もう充分理解している。
誠実に真剣に生きてきた人間が、
信頼の置ける放射線に特化したクリニックとの出会いによって、
少しでも希望が持てるなら、そこで治療を受ける事は、
実に自然な行為とは言えないだろうか。
私の気持ちはどうでもいい。
標準的な流れ作業の治療に身を委ねることなくやって来たことが、
今、少しでも実ればいいのに、と思っている。
とにかく19日から3週間、15回の照射を実行する。
その間、抗がん剤は休薬。
低用量なので、他の転移巣が気になるようなら併用してもいいけれど、
3週間なので、休薬して様子を見ましょう、となった。
心配は尽きない。
だけど、人間にとって、やはり希望は不可欠である。