死人の耳に念仏 | 9月30日

僕は病人だとは思っていない。

明らかに病気を治療しようとしている人間ではない。

むしろ死をひたすら待つ隠れ死人だと思っている。

従って医師の言葉は念仏のように僕の耳を素通りする。

「これをしてはいけない」「早急に検査をしよう」「この症状はこうかも知れない」

真面目腐って何を言ってるのかな、と思ってしまう。

重病人扱いすることで、自身の職務を誤魔化し、美化し、

治せる錯覚の中で無理矢理、

自分の気持ちを奮い立たせているように見えて仕方がない。

大阪府立成人病センターのような

ガンの拠点病院では治らない人間に対して、

治療を目的にするのではなく、

その人の人生をその人らしいものにしてあげる事が最優先であり、

その他は要らぬ文明の力に過ぎず、

医師として正面から患者に向き合える物ではない。

ここのところを履き違えると

死ぬまでの間、苦しむ為に生きなければならず、

楽に死にたいという思いは真っ向から否定される事になる。

このひたすら切実な患者の気持ちを医師は汲み取り、

診療に対する一つの哲学を生み出すべきなのではないだろうか。